ネグリジェエ:森の中

ぽつぽつてくてく
ぽつぽつぽつり、てくてくてくり。

ここがどこだかわからない、
目印はない、
森。
森しんしん。
深くもあり、浅くもあり、
深くもり、浅くもり、
入り口でもなければ出口でもない、
ここはなにもないところ。
いえいえ森にあるべきもの以外はなにもないところです。

ずいぶん歩いて、
なんにもない。
森しんしん。
しーん。
しーん。
しーん。

なんにも会わない日はうっかり自分に出会ってしまうから要注意。
うっかり出会う自分はいつもよりだめな自分。きらいなわたし。


ドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキ、、、


なんにもない、
なんにもない、

ドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキ、、、

メメは急に怖くなって
森の外に出たいと強く願いました。

吊り上がった目
呼吸するのを忘れた鼻
唇は乾いて、今にもひび割れそう。


ぐっと目を閉じ、強く強く。
強く、
つよく、
つよくううーーーーーワン!

目を開けるべきタイミングでぱっと視界が開いて、
メメは森の外にいました。
そこにはお家がありました。
明かりがついていて、ママがいるのがわかりました。
ロロのにおいもしたし、温度も感じました。

はー。
音もなく息をついて、メメはやっとメメにかえりました。

きゅうってあがっていた肩からすっと力が抜けて、
鼻先がふふんと笑いました。
グーにしていた手はやわらかく広がって、
さっそくまた歩くのです。

ぽつぽつてくてく
ぽつぽつてくてく

メメは散歩が好きなのです。
散歩が楽しんでいる自分を気に入っているのがメメ。
そうそう。
ぽつぽつてくてく。